日立感染症関連研究支援基金 研究成果報告書(日本語)
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ても重要なことだったと思います.この現象はパンデミックのような感染症問題に限らず,たとえばウクライナ戦争のときも同じです.先進諸国の危機が間近に迫っていたため,反応は非常に早かった.でも,イラン・イラク戦争のときには,ある程度放置されていたような時期がありましたし,もっと放置されていたのは,おそらくルワンダの虐殺ではないでしょうか. こういった差は,人間の根本的な感覚に関わるもので,本当に「ワンワールド」をめざすのであれば,こうした状況をもっとフラットにしていく必要がある.その意味で,先生方の発表から感じられた使命感はとても意義深いものでした.どのようにすればこの使命感を世界に広げていけるのか.物事を対立する利害や力関係で判断するのではなく,理想的な社会のあり方に光を当てようとされたことに,大きな意義を感じています. また,金子先生のご発表に加え,鈴木先生,鎌江先生のご発表から私が共通して感じたのは,ヒューマンヘルス(人間の健康)の課題として,COVID-19 が私たちにどう影響を与えたかを研究されていましたが,それは実はヒューマンヘルスを超えて,プラネタリー・ヘルス(地球規模の健康)につながっているのではないかという点です. 今回問題となった病原体は,人獣共通の感染症です.このような病原体がなぜ発生し,どのように広がったのか.陰謀論(コンスピラシー説)などもありますが,基本的には,こうしたパンデミックが起きやすくなる背景には「生物多様性の喪失」があるのです.気候変動に対しては,企業セクターが比較的早くから反応し対応を始めていますが,生物多様性の損失については,まだ十分な関心が払われていません.こういった研究の推進には企業セクターの参画が不可欠である事から,その価値観形成のために,今後も内藤理事長(当時)のご尽力をいただきたいと思います. ここで改めて興味深いと感じるのは,「問題が実際に起きるまでは関心が集まらない」という人間の行動パターンです.このメカニズムも科学的に証明されており,パンデミックが起きる十数年前に,そのリスクに関するエビデンスを提示した研究が「ネイチャー」に発表されていましたが,その当時はあまり注目されませんでした.ところが,2020 年以降は一気に注目度が上がった.つまり,人間は「先を見ても行動に移さない」ということが分かります.しかし,先生方はその知性を実際の行動に移している.その姿勢こそが,社会全体に広げていくべき模範だと思います. また,鈴木先生と鎌江先生のお話から感じたのは,「プレエンプション(Pre-emption)=予防的介入」を考えたときに,いま直面している問題に直接関係がなさそうに見える研究も,実はどこかでつながっているということです.たとえば,人獣共通感染症の拡がりのメカニズムは非常にシンプルです.大型動物が失われると,その体内にいたウイルスが小型動物に移る.そして小型動物は繁殖が早く数も増え,人間社会に入り込みやすい.だから人間にも感染が広がりやすくなるのです.このようなことを長年の研究からエビデンスとして示しているのが,フェリシア・キーシング(Felicia Keesing)という病理生態学の先生とヨハネス・グーテンベルク大学のトーマス・エファース(Thomas Efferth)先生です.後者は,アルテミシニンを用いてさまざまな人間の健康問題を緩和するプラネタリー・ヘルスの研究者です.皆さんがこのような世界の研究者たちとつながりを持ち,日立財団がこのプロジェクトを始めたことは,私は「運動の種まき」のようなものだと感じています.それを地球全体に広げていくためには,まず身近なところで何ができるかを考えていたただきたいというのが選考委員としてのお願いです. そこで,私からの私的な提案ですが,日立財団が最終的に理事会に提出するレポートを作成されると思いますが,それをただの報告書で終わらせず,ISBN 番号をつけて出版物として残してはいかがでしょうか.皆さんの研究がいかに多様で重要な「種まき」だったかということを,たとえば有名な学会と協59

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