日立感染症関連研究支援基金 研究成果報告書(日本語)
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図 4.経済学的介入,Suba South,ケニアOlysetPlus 天井式蚊帳の展開を進めている.一つは,よ り 高 い マ ラ リ ア 伝 播 が 続 く,内 陸 部 のNdhiwa Subcounty における新たなクラスターランダム化比較試験による検証である.もう一つはタンザニア,ウガンダ,ルアンダ国境のカゲラ地域である.アルテミシニン耐性原虫封じ込めに向けた緊急対策 アルテミシニンは現在,熱帯熱マラリアの第一選択治療の主軸であるが,この薬剤に対して耐性を持つ熱帯熱マラリア原虫(ART-R)が 2009 年にタイ・カンボジアの国境で報告され,以降 Great Mekong Subregion と呼ばれる地域を中心に分布域の拡大が見られていた.とうとう 2021 年には高いマラリア発症率,死亡率を示すアフリカにおいても ART-R が報告されることとなった[Stokes BH et al. 2022]. 上記カゲラ地域では ART-R の蔓延が確認されている.高い流行度と薬剤耐性が組み合わさる現状は,過去においてやはり東南アジアで出現したクロロキン耐性熱帯熱マラリア原虫が熱帯アフリカに拡散し 1990 年台から死者の激増を招いた暗黒の歴史が彷彿され[Attaran A et al. 2004; Murray CJ et al. 2012],アフリカ全体に関わる危機的状況である. タンザニア保健省の要請を受けて,ART-R 封じ込めるための緊急対策として OlysetPlus 天井式蚊帳のパイロット導入がカゲラで実施された.カゲラにおいても住民の高い受容度が示されている.経済学的介入 行動経済学の知見を基に,マラリア高感染地域の住民を対象とし,予防行動および早期治療行動を促進する政策ツールの開発を試みた. 本研究では,マラリア予防および早期治療を促進する施策として,疾病に関する知識を強化するためのタブレット端末向けマラリア教育コンテンツ(EDU)を開発した.さらに,金銭的インセンティブによる行動変容を検証するため,マラリア陰性者を対象とする条件付き現金給付(CCT)と抽選型報酬(LIS)のスキームを採用した. 教育コンテンツには,行動経済学の知見を活用した 2 つの要素を組み込んだ.第一に,利他的動機の喚起である.「家族のために,地域のみんなのためにマラリア予防を徹底しよう」というメッセージを通じ,社会的規範に基づく行動を促した.第二に,損失回避の活用である.感染による治療費負担や逸失所得,子どもの教育機会の喪失といった損失を明示し,現状維持を守るための予防行動の重要性を強調した.また,インセンティブ制度の設計においては,先行研究で有効性が報告されている抽選型報酬を導入した.このスキームでは,当選確率は低いが高額報酬が期待できるため,「小確率事象の過大評価」という行動経済学的な認知バイアスに基づき,同じ期待報酬額であっても CCT より高い行動効果をもたらす可能性があると考えた.ケニア・ホマベイ郡南スバを対象に,ランダム化比較試験(RCT)により政策効果を検証した(図 4).25日立感染症関連研究支援基金 研究成果報告書

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