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座談会大阪府教育委員会座談会

「OSAKA多文化共生フォーラム」がめざすもの

榎井 縁 写真
モデレーター
榎井 縁
大阪大学 人間科学研究科 招聘教授
荒木 夏子 写真
登壇者
荒木 夏子
大阪府教育庁 教育振興室 高等学校課 生徒指導グループ 主任指導主事
山本 佐和子 写真
登壇者
山本 佐和子
大阪府教育庁 市町村教育室 小中学校課 進路支援グループ 首席指導主事
白川 宏明 写真
登壇者
白川 宏明
大阪府教育庁 市町村教育室 小中学校課 進路支援グループ 主任指導主事
米田 晶一 写真
登壇者
米田 晶一
大阪府教育庁 市町村教育室 小中学校課 進路支援グループ 指導主事

榎井:本日は,大阪府教育委員会が主催している「OSAKA多文化共生フォーラム」を中心に,フォーラムがめざしていること,取り組み内容,子どもたちの反応,今後の展望などについて,皆さんからお話をうかがいます。大阪府教育庁では,かねてより,人権尊重の観点から正しい理解を深め,差別をしない,させない実践力を身に付けた生徒の育成に努めてきました。近年は,益々増加する“外国にルーツを持つ子どもたち”のため,義務教育課程である小・中学校と高等学校の生徒をつなげる「OSAKA多文化共生フォーラム」を開催したり,府立高校で「枠校」を定め,受け入れの体制を整えたりしています。大阪府でいう「枠校」とは,「日本語指導が必要な帰国生徒,外国人生徒入学者選抜」をいいます。では,最初に昨年7月19日に開催された「OSAKA多文化共生フォーラム2025」について,ご説明お願いします。

白川:フォーラムには,日本語指導が必要な中学生や外国にルーツのある中学生,その保護者,府立高校生等合わせて280人ほどが参加しました。最初に高校生による自己紹介があり,続けて“多文化クラブ”のダンス発表が行われました。府立長吉高校がベトナム,府立成美高校がフィリピン,府立大阪わかば高校がネパールのダンスをそれぞれ披露したのですが,民族衣装をまとい真剣に踊る姿は素晴らしく,大きな拍手で会場が包まれました。そのあと,3人の高校生によるスピーチが行われ,「日本語が話せずに苦労したが,少しずつ話せるようになり,友だちと交流できるようになった」「今は大学受験に向けて頑張っている」「将来は自分の生まれた国と日本をつなぐ架け橋になりたい」などが語られ,中学生たちも真剣に聞いていました。また,インタビューコーナーでは,私たちがインタビュアーとなり,中学校と高校の違いや自分の通う高校の特徴などについて質問し,高校生のリアルな本音を引き出すことができました。最後は母語が同じ中学生と高校生でグループを作って交流をしてもらいました。いろいろな質問に高校生も熱心に答えていて,双方にとって充実した時間になっていました。

榎井:私もダンスを拝見しましたが,衣装を揃え,音楽も自分たちでチョイスし,プロさながらのステージで本当に感動しました。皆さん,この日に向けて相当練習を重ねていたそうですね。

OSAKA多文化共生フォーラム2025の様子
OSAKA多文化共生フォーラム2025の様子

荒木:はい。枠校には必ず多文化クラブがあり,放課後集まって勉強したり,イベントに参加したりすることで,お互いが孤立しないような工夫をしています。ダンスはクラブ活動の一環として取り組み,校内の文化祭はもちろん,校外のイベントにも参加するため,常日頃,練習を重ねています。

米田:私は当日,リハーサルからずっと高校生たちを見ていましたが,最初は「こんな大きなホールで踊れるかな」と,少し不安そうでした。ところが,いざ本番となると途端に顔つきが変わって,見られていることがいい刺激になったのか,生き生きとパフォーマンスしてくれました。

榎井:当日,中学生たちが高校生にどんな質問をしたのか,また,みなさんの感想についても,具体的に教えてください。

白川:質問内容として多かったのは,やはり勉強のことでした。ほかには友だちのつくり方や高校卒業後の目標など,多くの子が悩んでいるだろう質問が多く,興味を持って聞いていました。当日の感想としては,中学生からは「行きたい高校のことがよく分かった」「自分の思っていることを聞いてもらえてうれしかった」「先輩たちはすごいなと思った」などがありました。なかには「久しぶりに母語で話ができてうれしかった」という感想もありました。高校生からは「中学生にアドバイスができてうれしかった」「これからもこういったボランティアがあれば是非参加したい」「自分が小中学校の時に悩んでいたことを思い出しながら話をしたら,それを中学生が一生懸命聞いてくれた」などがあり,高校生にとっても,このフォーラムは自己肯定感を高めるものになったようです。

榎井:このフォーラムは,子どもたちの心理的安全性を保障するための土台づくりをしている場です。高校生と中学生を出会わせて,参加した子どもたちが元気に学校に行きたいと思え,進学したいと希望を持ち,最終的には日本で頑張っていきたいと思えるよう,導いています。そういう大人たちの思いは子どもたちにも通じているようで,「学生時代に助けてもらったから,今度は自分が助ける側になりたい」と言ってくれる枠校卒業生も多くいて,すでに4~5人が実際に大阪の学校の先生になっています。

米田:まさに今回,フォーラムの高校側の取りまとめ役をしてくれた先生が,その一人です。

榎井:そうやって,日本で自己実現をした先輩の姿は後輩たちにとっても憧れであり,目標にもなります。日本語がよく分からないなかで学び,教員免許を取って教師として働く。相当な熱量が必要だったに違いなく,本当に素晴らしいことだと思います。

米田:私はときどき,学校訪問をして,外国にルーツのある子どもの普段の様子を見せてもらっています。そのなかには,周囲と関わる機会が少なく,一人でポツンと過ごしている子もいます。話を聞いてみると,「日本語がうまくしゃべれないので,言いたいことが伝わりにくい。だから,しゃべらないことが多い」と言っていました。そういう子も,フォーラムに参加すると,母語を通して話ができるので,とても生き生きしているのです。本当に限られた時間のなかですが,この場が子どもたちにとってありのままの自分で輝ける充実した時間になってほしいです。そしてこのひとときが,子どもたちの安心や自信へとつながってほしいと思っています。

OSAKA多文化共生フォーラム2025の様子

「枠校」制度で開かれる未来

榎井:ありがとうございました。ではここからは,すでにお話にでている大阪の「枠校」について,どういった特徴があり,なぜこうした制度ができたのか,お話していきましょう。

荒木:はい。大阪の高校には「日本語指導が必要な帰国生徒,外国人生徒入学者選抜」実施校があり,これを通称「枠校」と呼んでいます。枠校ができたのが平成13年(2001)で,現在は 8校あります。人数としては,府立大阪わかば高校に 20名,他の7校に約16名ずついて,総数は約130名です。特徴的なのは,高校入試における学力検査の科目です。通常は「国語,数学,理科,社会,英語」の5教科ですが,社会や理科のテストは,日本語が母語でないと学力を測ることが難しいため,枠校入試には入れていません。つまり,日本語の読み書きが苦手でも,母語と数学,英語の能力があれば入れる高校がある,ということです。さらに入学後は母語の授業が受けられます。どんな言語でも保証するので,教える教師を探すのが大変なのですが(笑),たとえ生徒が一人であっても,大学などにも声をかけて教師を探します。現在は,中国語,ネパール語,フィリピン語,ベトナム語,トルコ語,ペルシャ語の授業が実際に行われています。また,入学早々,日本語能力試験や英語検定の受検を勧めるなど,進路によって生徒を導いていくことも積極的に行っています。

榎井:府立大阪わかば高校の受け入れ人数が多いことについて,ご説明お願いします。

荒木:ここは令和4(2022)年に枠校になった学校で,もともとは,大阪府立勝山高校と大阪府立桃谷高校が統合して令和2(2020)年にできた学校です。学び直しや不登校経験のある生徒の,セーフティーネットという役割を受け継いでいます。一番の特徴は,多部制単位制をとっていることです。日本語のプログラムが組みやすく,授業が選びやすい教育課程になっているため,外国にルーツを持つ子も学びやすいため,受け入れ人数が多くなっているのだと思います。

榎井:同校では,“ダイレクト”の学生が多いことも特徴的ですね。ダイレクトというのは,日本の小・中学校で学ぶことなく「ダイレクトに」高校に入ってくる子のことです。去年,初めて卒業生を送り出しましたが,ほぼ100%の子どもが就職や進学を果たしました。入学時,全く日本語ができなかった生徒が大学に進んだことは,大変誇らしいことです。見ていると,学生は自分に自信を持ち,頑張れる範囲できちんと力を発揮しています。勉強はもちろん,クラブ活動も主体的に行い,家庭によってはアルバイトをしている子もいます。個人の努力はもちろんですが,周りのフォローがしっかりしているので,彼らはほとんど休むことなく通えたのだと思います。彼らを見ていると,しっかりと支えてくれる環境は大事だと,つくづく思います。

荒木:支えると言っても,私たちは特別な声がけはしません。誰にでもかける言葉を,より分かりやすく伝えるぐらいです。ポイントは,“どの生徒に対しても変わらない態度”でしょうか。もちろん,支援に携わる先生は,外国にルーツのある生徒ならではの伝えておくべきことは,漏れなく丁寧に伝えることも心がけています。

山本:大阪の教育は,基本のところで「誰一人取り残さない」を掲げているので,外国にルーツがあろうが,日本語が苦手だろうが,貧困で経済状況が厳しかろうが,障がいがあろうが,できる限り人的な支援や環境を整えて,子どもたちの可能性を伸ばしていく努力を惜しみません。また,子どもは子どものなかで育つので,「いろんな子がいていいんだよ」というスタンスで,あとは子どもたちが自分たちの関係性の中で育っていけるように配慮しています。外国にルーツのある子については,“日本語ができない子”ではなく,複数の言語の力をもつ子ども,あるいは複数の文化をもつ“可能性のある子ども”と捉えます。教職員は「違うことは素敵なこと。豊かなこと。」という価値観で寄り添い,伴走する存在です。

榎井:大阪の「枠校」ができた経緯には,こんなお話があります。かつて,ある先生が,中国から帰国した子どもたちを東京に連れていったところ,帰国子女のための学校がすでにいくつかあり,それを目の当たりにした子どもたちが「大阪にもこういう学校をつくってほしい」と言い始めたのだそうです。それまであまり話をしたことのない生徒だったので,先生はびっくりしたそうです。そこから,いろいろな壁があって自分の思いを言えず我慢している子どもがいて,しんどい思いをしていることがわかり,彼らが我慢しなくていい環境を作ろうということで,枠校を立ち上げることになったと聞いています。

「誰一人取り残さない」ためには個々の「背景」を知ることが大事

榎井:先ほど話に出た「誰一人取り残さない」というのも,大阪が大切にしている教育方針のひとつです。始まったのはいつごろだったでしょう。

山本:在日外国人教育の歴史は長いです。戦後すぐでしょうか。大阪は歴史的な経緯の中で在日韓国・朝鮮人の割合が高く,戦後も様々な事情により日本で暮らすことになったため,韓国・朝鮮にルーツのある人が住む街も形成されました。社会的背景のもとで在日韓国・朝鮮人が差別や偏見の対象とされ,そんな子どもたちの生きづらさに直面した現場の教職員が「このままじゃあかん。一緒に生きていける子どもたちに」「韓国・朝鮮の子どもたちがアイデンティティを育めるように」という意識をもち,「どんな子どもも大事にしよう」と考える中で在日外国人教育が育っていったのです。

榎井:差別や貧困のために子どもたちが荒れた時期もありましたが,その子に問題があるわけじゃなくて,彼らが抱えている背景に問題があるのだと先生たちも気がつき,その子たちがいづらくならないようにしようと,発想の転換があったわけですね。

山本:はい。そうですね。外国にルーツのある子どもも“健全に育っていく権利”を当たり前にもっているし,それを保障するのが行政の仕事で,教職員は一緒になって環境をつくっていくのが役割です。

榎井:学校には,「学力のある子はメリットを受けやすい」という,いわゆる選抜機能があります。こうした特定の人を選抜する文化を壊していくのが,大阪の学校教育です。高校にしても「学力がなかったら入れません」という適格者主義はやめて,すべての子どもに学ぶ機会を与え,なるべくみんなで一緒に学ぶ体制をつくるようにしています。

白川:私は他府県から大阪に来て働いていますが,赴任当初,先輩から言われたのが,「一人ひとりの子どもの背景をしっかり見つめることが大切だ」ということでした。背景を見ることから子どもを知る,というのは大阪らしい教育のひとつなのだと実感したことを覚えています。

山本:外国にルーツをもつ子どもと言っても,その背景に何を抱えているかは本当に多様です。日本に来た経緯ひとつとっても千差万別です。でも,せっかくその子の人生に出会わせていただいた以上,こちらは,どういうふうに伴走ができるのか,どうすればその子の成長に寄り添えるのか,というのを常に探っていきたい。だから背景を知ることは大事なのです。そして,知り得た情報はきちんと次に引き継がなくてはいけません。子どもの育ちは繋がっていくので,切らしてはいけないのです。小学校から中学校,高校と進学するたびに育ちが途切れないように,学校同士の連携も大事にしています。

「いじめ問題」は社会全体の問題と捉える

榎井:昨今は学校でのいじめ問題も大きな課題ですが,どのような解決方法をとっていますか。

山本:もちろん,いじめられ,傷ついた子どものケアが最優先です。一方で,加害をしてしまった子どもも,教育を通して成長すべき存在です。被害を受けた子どもを守りながらも,なぜ傷つける言動をしてしまったのか,それこそ背景を一緒に見つめ直して,その子が深く納得し,次の行動を考えられるように寄り添い,両方の子どもを育てていくというのが,めざしたいところです。

榎井:なぜいじめのような現象が起きてしまうのかというと,個々人の問題もありますが,歴史や社会構造の問題も当然あります。だったら,それに向かって学校や教育側が変わっていくべきでしょう。子どもが学校に来ていることがまず大事で,もし不登校になったときは「学校の環境が悪いのでは」と考えます。なぜ来られないのか,何か困りごとがあるのではないか,と考えて,学校が変わる努力をしなくてはいけませんね。

山本:今,社会には,生きづらい側面が多々あります。社会状況の中で,外国にルーツのある子どもは傷ついているかもしれないし,また,子どもの権利が剥奪されているケースもたくさんあります。だったら,せめて公教育においては,「ここにいていいんだよ」ということは全力で伝えたいし,学校は人権が尊重された場所でありたい。これは,公教育としては,当たり前のことですよね。

小学生の場合だと,コミュニケーションを取りたい,遊びたい,一緒に学びたい,という気持ちが原動力になって,日本語の勉強に意欲がもてます。ということは,その子がともに過ごしたいと思えるようなクラスや学校を作らなくてはだめなのです。日本語を使って誰かと繋がりたいと思えたとき,はじめて,日本語を学ぶ意欲がわいてきます。これは日本の子も一緒です。外国にルーツをもつ子と仲良くなりたいからこそ,一生懸命翻訳機を使って話そうとしたり,遊びを伝えようとしたりするのです。「繋がりたい」という思いがまずあって,日本語という共通言語を獲得して,互いに成長する。学校ってそういうところなのだと思います。

変化する社会に向き合い,変わっていくこと,変わらないこと

榎井:社会情勢もいろいろ変わっていますが,今後の教育について,どのような展望をお持ちなのか,お聞かせください。

荒木:実は高等学校に在籍する多言語生が,コロナ以降,激増しています。しかも,中学まで母国で育ち,生活が完成した状態で,親の都合で来日するケースがほとんどなので,目的を見失っている生徒が多いのです。でも,せっかく縁あって日本に来たのだから,ここでしっかり学んで夢を実現してほしいと思うのです。そのためにも,日本語を学び,早い段階から将来を見据えた指導を行い,今後の生きる道を一緒に考えていきたいです。昨年発表された「府立高校改革アクションプラン」では,令和10年度までに日本語指導の拠点校をつくることが決定し,枠校以外のどこの学校でも同じような学びが受けられる体制がつくられることになりました。私自身,現在,多言語生徒の支援に携わっているので,どの学校に入っても子どもが自己実現につながる学びを得られるよう,努力したいと思っています。

米田:小中学校でも状況は同じで,外国にルーツのある子がどんどん増えています。その子たちがいろんなところに点在しているので,どこの学校に行っても多文化共生の取り組みが当たり前に行われ,同じように学べることは理想です。小学校,中学校,高校のどこであっても,同じような理念を持って教育が行われていくことが大事ですね。

白川:外国からやってきた子どもたちが少数散在している現状において,どうしても支援が行き届きにくい市町村もでてきてしまいます。大阪府は広域行政ですので,そのような隙間にこぼれ落ちそうな子どもたちをしっかり支える施策を,これからも続けていきたいです。また,今は“外国人児童生徒に対する施策”になっていますけれど,これがいずれ,ともに学ぶ施策として,あえて“外国人児童生徒”という冠がなくてもいい時代がやってくるといいなと思っています。

山本:本当にどの子も幸せになってほしいですね。経済状況,生まれた場所,ルーツ。どんな背景であってもみんなが可能性を最大限に伸ばしていける大阪を作りたいし,そのためには,学校,市町村教育委員会と府が一緒になって頑張っていかないと届かない。子どもは元々もっている力があるのだから,そういった力を引き出すというか,大事にしていけるような教育をしたい。そして,それを担ってくれる大阪の教職員の皆さんを,全力で支えたいなと思います。

榎井:最近外国人に関するニュースが多いと思うのですが,先生たちはどのように感じていますか。それぞれご経験が深いなか,他の人には見えない視点でこういう風になったらいいのでは,という見解があればお聞かせください。

白川:例えばAという国に対して,あまりいい感情をもてないようなニュースが流れてきたとき,自分たちの教室や職場で,同じように考えていいのかな,ということは思います。私の知っているBさんはA国の人だけど,私と仲よしだ。だとすれば,個人として繋がっている以上,国同士の政治的な関係はいろいろあるとしても,Bさんとの友好関係は大切にするべきだと思います。生活の中で相手を尊重できればともに生きる世界はできると思うのです。偏見や差別に打ち勝つには,やはり個人個人の繋がりを大切にすることだと思います。

山本:そういうとき,「A国の人はこうだと,ひとくくりに決めつけるのはやめましょう」という教育は,もちろんしています。でも,子どもは社会を映す鏡なので,ネガティブなニュースが流れれば,ネットや動画を見たり保護者から聞いたりして情報を得てしまうし,その国にルーツのある子に無自覚な批判をする子どもも,出てきてしまいます。そうした反応はある意味で自然な姿なので完全に避けることはできません。だからこそ,私たちはそこをスタートと捉えて,「なぜその言葉が出てきたのか」その子と一緒に考える機会を大切にしています。むしろ,言ってしまった子こそ,今後,多文化共生の行動ができる可能性のある子だからです。学校も,その子個人のせいで終わらせるのではなく,取り組みを見直すチャンスだと捉え,なぜその子がその言葉を発したのか,クラスの状態やその子の今生きている環境を見つめ直して,必要な教育を進めたり,素敵なモデルに出会う教育を企画したり,多文化共生フォーラムにみんなで参加したりなど,いろいろな取り組みを通して,それに打ち勝っていく努力をしたい。こういうことはもう,本当にいたちごっこなのですけれど,でも諦めません。人間は失敗から学ぶ生き物です。だからこそ,どんなに繰り返しになっても,けっして諦めず,子どもも大人もともにみんなで学んで成長していくことを大事にしていきたいと思います。

榎井:いろいろと貴重なご意見,ありがとうございました。外国にルーツを持つ子どもがますます増えていくなか,分け隔てなく,子どもたち全員が健全に育つよう導くのは,私たち大人の責任です。社会的な背景によって権利を奪われることなく,夢を実現してほしい。その意味で,「誰一人取り残さない」教育を,私たちはこれからも真摯に追求していきたいですね。これからも,ぜひ,頑張ってください。本日は本当にありがとうございました。

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