
日立財団アジアイノベーションアワードは、ASEANの社会課題解決と持続可能な社会実現に資する科学技術イノベーションを促進するために、2020年度より開始した表彰事業です。
本アワードでは、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目的として、あるべき社会像を描き、科学技術の社会実装を計画に入れた優れた研究および研究開発において、画期的な成果をあげ、明らかに公益に供したと思われる個人またはグループを表彰します。
2025年度は、ASEAN6か国(インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナム)の26の大学・研究機関を対象に、SDGsの17のゴールと169のターゲットのうち、応募者が選定した1つのゴールと1つのターゲットに貢献する研究および研究開発の成果を募集しました。
対象大学から推薦による応募を受け付け、書類審査、面接(最優秀賞候補者のみ遠隔で実施)、選考委員会を経て、13名の受賞者が選定されました。
以下のとおり、今年度の選考委員会メンバー、選考委員長講評ならびに、受賞者の研究概要と挨拶をご紹介します。
委員長
公立大学法人 国際教養大学 理事長・学長
モンテ カセム
委員
京都大学 副学長(国際戦略担当)
河野 泰之
委員
独立行政法人 国際交流基金 参与
佐藤 百合
委員
国立大学法人筑波大学 国際産学連携本部 本部審議役 特任教授 博士(工学)
西野 由高
委員
東京電機大学 システムデザイン工学部 学部長・教授 工学博士
前田 英作
選考委員長 モンテ カセム
日立財団アジアイノベーションアワードはASEANの社会課題解決と持続可能な社会実現に資する科学技術イノベーションを促進するために2020年度から開始した表彰事業です。本アワードでは、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目的として、あるべき社会像を描き、科学技術の社会実装を計画に入れた優れた研究および研究開発において、画期的な成果をあげ、明らかに公益に供したと思われる個人またはグループを表彰しています。
事業開始から6年目となる今年度は、SDGsの選択方式と評価項目を見直しました。応募者が研究テーマを通じて貢献したいSDGsのゴールとターゲットを、それぞれ1つずつ自由に選択できる方式に変更しました。従来は事務局が提示する2つのゴールから選び応募する形式でしたが、この変更により、研究者の専門性や関心に応じた多様な提案が可能になりました。また、選考基準も従来の7項目から、
の4項目に整理し、評価の軸をより明確にしました。
対象国は昨年度と変わらず、ASEAN6か国(インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナム)の26大学・研究機関です。
応募案件を総覧すると、昨年度より全体的に提案の質が向上していると感じました。SDGs選択の自由化により、幅広い分野の研究が集まり、審査は非常に興味深いものでした。国ごとに特徴も見られ、ASEAN全体に技術を広めようとする研究、自国の資源や仕組みを活用したイノベーション創出、産業構造に合わせた製品開発や人材育成など、多様な取り組みがありました。今後も、社会実装につながる未来志向の研究を丁寧に発掘していきたいと考えています。
2025年9月から10月に開催された選考委員会では、申請書や学術論文、オンライン面接を総合的に評価し、研究開発力の差も考慮した厳正な審査を行いました。その結果、最優秀賞1件、優秀賞4件、奨励賞8件の合計13件を選定し、理事長の承認を得て、総額1,100万円の表彰を決定しました。
この表彰が、受賞者の研究を社会に広げる原動力となることを、選考委員一同心から期待しております。
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ターゲット12.2
エネルギーを超えた地熱:地熱水からの有用鉱物回収とグリーン産業への応用
Himawan Tri Bayu Murti Petrus
ガジャマダ大学
Professor, Chemical Engineering
インドネシア![]()
最優秀賞受賞者の研究概要を動画でご紹介します。
エネルギーを超える地熱の価値;地熱塩水の循環的価値形成:クリーンエネルギー・グリーン産業・先端材料応用に向けた有価鉱物の持続可能な回収
地熱エネルギーはクリーンで再生可能ですが、その作業工程において鉱物が豊富ながら未活用の廃塩水が発生し、処置を誤ると生態系に悪影響を及ぼしかねません。同時にリチウム、シリカ、ホウ素など重要鉱物に対する世界的需要が高まる一方で、従来の採掘方法は環境・社会的な損害の原因となっています。また鉱物資源は地政学的に偏在しているため、地熱資源が豊富な多くの国々にとってアクセスが制限されています。本プロジェクトは、廃地熱水から有価鉱物を現地で回収して、環境への影響を軽減し、サプライチェーンを強化し、グリーン経済への公平な参加を促進することにより、持続可能な解決策を提供するものです。また研修と利益の共有を通じて地域社会に力を与え、グローバルな持続可能性目標に沿った包摂的で資源効率の高い開発を促進します。
本プロジェクトは、地熱塩水から高付加価値製品とクリーンな抽出技術を開発・実証することに成功し、持続可能性、産業イノベーション、資源効率性の向上に貢献しています。
科学及び商業的成果には以下が含まれます:
本プロジェクトは戦略的に以下を推進:
地熱資源が豊富な開発途上国に向けて再現可能なモデルを提示します。
段階:
本プロジェクトはパイロット規模の試験と地域社会との積極的な連携を特徴とする初期実施段階にあります。
主要な活動および成果:
ロードマップ (2025-2027年):
ビジョン:
地熱発電所を、クリーンエネルギー、鉱物回収、包摂的なグリーン経済発展のための総合的な拠点へと転換します。
本プロジェクトは主に、地熱塩水からリチウム、シリカ、ホウ素を回収し、廃棄物を貴重な鉱物に変換し、新規鉱山開発への依存度を低減することでSDG目標 12.2(天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用)の達成に貢献します。また以下を支援します。:

水田(収穫期)におけるナノシリカ導入例(写真右端、緑のシャツを着ているのが筆者)

アグリナス・パルマのメンバーに対し、水稲栽培へのナノシリカの導入について説明

ヤシ農園で働く人々への情報提供
好奇心によってわれわれは決して身を滅ぼすことはないー私はこうした勇気を、研究開発の歩みにおいて育まねばなりません。情熱的で影響力のある存在であること、それが、研究成果が実装される時点で最終目標を明確にするための精神です。
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ターゲット6.3
汚染物質からタンパク質へ:食と環境を守るバイオレメディエーション技術
Adi Setyo Purnomo
スラバヤ工科大学
Professor, Head of Fundamental Science Research Center ITS Directorate of Research and Community Services, Laboratory of Microbial Chemistry, Department of Chemistry, Faculty of Science and Data Analytics
インドネシア![]()
汚染物質からタンパク質へ:環境衛生と食料安全保障のための新しいエコバイオレメディエーション・ビーズ
工業用バティック染料の廃液はインドネシア農村部で目に見えない危機となっており、水路を汚染し、土壌を枯渇させ、地域社会全体を危険にさらしています。公衆衛生、農業、伝統的な生業が同時に被害を受けており、かつての文化的遺産が環境・社会経済的負荷へと変貌しています。
細菌を用いた高性能のバイオコンポジットと二酸化チタン(TiO2)光触媒の相乗効果により、有毒なバティック廃水を清潔で安全な水に変える画期的なソリューションを実現しました。この太陽電池式の反応装置は、完全なオフグリッド運転で90%以上の脱色を達成し、処理コストを最大50%削減します。装置はモジュール式で使いやすい設計であるため、小規模運営の職人でも高度な浄化技術を利用できます。さらに処理水と回収された廃棄物はキノコ栽培用培地へと転換され、農村地域に新たな経済的価値をもたらしています。汚染制御をチャンスとレジリエンスへと転換することで、この革新技術は分散型水処理の新たな基準を確立し、より持続可能で包摂的な産業の未来に向けて重要な一歩を刻んでいます。
東ジャワ州農村部での実践は、技術の導入にとどまらず、清潔な水と持続可能な生産に生計を依存する職人の日々の現実を理解することから始まります。当システムは、職人の作業フロー、文化的慣行、地域的制約を踏まえて共同設計されています。導入後は継続的な指導の実施により自信を培い、職人たちが太陽電池式反応装置を独自に操作・故障診断・維持管理できるようにします。このアプローチを通じて地域社会の主体性を高め、技術的・環境的リテラシーを強化し、長期的な安定性を生み出します。具体的な成果として以前よりも清らかな河川、より健全な生活空間、そしてより強靭な農村産業が実現し、村に根ざしたバティックコミュニティのために誰でも利用できるイノベーションが尊厳、安全性、経済的機会を取り戻す様子が明らかになっています。
この取り組みは、水質の回復、有害汚染の低減、ジェンダー包摂的な産業の推進、農村部のレジリエンスの強化、再生可能エネルギーを活用したクリーンテック・ソリューションの拡大を通じて、SDGs目標 6、9、12、15を推進するとともに、SDGs 目標3、5、7、10、13を支援します。
MB脱色における生物吸着および生物変換のメカニズム
インドネシア東ジャワ州農村部での太陽電池式バイオリアクターの設置
イノベーションは最も強く環境被害を受ける人々の生活に届いた時、その真の意味を発揮します。科学が地域の知恵に耳を傾けることで、健康を守り、生態系を回復させ、持続可能な未来を創り出す解決策が発展します。それがすべての人を取り込み、世代を超えて続く進歩なのです。
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ターゲット9.1
電子パッケージの信頼性向上に向けた熱機械解析と設計技術の開発
Aristotle Tulagan Ubando
デ・ラ・サール大学
Full Professor and Assistant Dean for Research and Advanced Studies, Department of Mechanical Engineering, Gokongwei College of Engineering
フィリピン![]()
半導体および電子パッケージングの信頼性向上のための熱機械分析および高度なコンピュテーショナル・デザイン
フィリピンの半導体・電子機器製造部門は輸出の主要なけん引役にもかかわらず、高付加価値を生む国内での研究開発能力が不足しています。同業界は製品設計において高コストで非効率な実験手法に依存しています。このため国内でのイノベーションが阻まれ、持続可能な実践の導入が制限され、高度な技術を持つエンジニア人材の育成が進んでいません。
政府の支援により設立された熱機械分析研究所(TALa)が、フィリピン半導体企業との順調な連携モデルの一例となっています。TALaは、熱的・機械的応力下における電子パッケージの材料挙動を仮想評価する、計算に基づく有限要素解析(FEA)ソリューションを提供します。この研究開発は従来の実験的試験に代わる費用対効果の高い代替手段を提供し、物理的な試作に伴うコストと時間を大幅に削減します。これにより設計の迅速な最適化が可能となり、製品の失敗を防ぎ、最終的にフィリピン製電子パッケージの品質向上につながります。またTALaは高度な技術を持つエンジニアを育成し、国内で研究開発の貴重なキャリア機会を提供しています。
TALaはデ・ラ・サール大学(DLSU)ラグナキャンパス(ラグナ・テクノパークに近接)に位置し、半導体企業向けのコンピュテーショナルデザイン・リソースとして機能しています。この産学連携モデルにより、歩留まり改善や次世代製品研究開発といった産業の重要課題に学術研究が直接対応することができます。政府および産業界の資金によるプロジェクトを通じて高性能スーパーコンピュータを導入し、産業界パートナーに不可欠かつ利用しやすい計算インフラを提供しています。この実践集中プログラムでは高度な技能を持つ学生と教員を育成し、地域の産業セクターを高付加価値で自立した設計・イノベーションへと着実に移行させています。
TALa はSDG 目標9(産業、革新、インフラ)に直接取り組んでいます。具体的には、国内の科学的な研究開発能力を大幅に強化し、電子産業分野における革新を促進することでターゲット9.5を推進しています。TALaは高度な専門性をもつエンジニア人材の育成を保証します。


TALaにおける私たちの取り組みは、大学、政府、地元企業が連携することで、堅牢かつ革新的な電子パッケージング設計を実現できることを証明するものです。この研究開発イノベーションでは、学生と教員双方を巻き込んで現実の産業課題を解決しています。このソリューションは、経済を強化し、フィリピンの次世代エンジニアのために高度な雇用を創出することにより、わが国を変革します。
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ターゲット11.6
有害ガスの早期検知による健康・環境保護を目的としたスマートガスセンサー技術の開発
Manh Hung Chu
ハノイ工科大学
Associate Professor, Department of Electronic Materials and Devices; School of Materials Science and Engineering
ベトナム![]()
健康と環境を保護するための有毒・有害ガス早期警報に向けたスマートガスセンサーの開発
大都市における都市化、急速な工業化、交通量は、有毒・有害ガス(二酸化窒素[NO2]、一酸化炭素[CO]、炭化水素[HC]、硫化水素[H2S]など)の排出量増加をもたらし、大気汚染と健康リスクを引き起こしています。このため、リアルタイムでのガス監視と大気汚染早期警報のためのスマートセンサー・システムの開発が急務となっています。
本研究開発は、ドープ/修飾された半導体性金属酸化物(SMOs)および遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD:二硫化モリブデン[MoS2]、二硫化タングステン[WS2]、二硫化スズ[SnS2]など)を含む先端ナノ材料を用いた低消費電力ガスセンサーの開発に成功しました。これにより、低温度または室温において、ppmおよびサブppmレベルの複数の有毒ガスに対して、高感度、高選択性、高速反応を実現しました。当センサー装置は無線通信モジュールを備えたコンパクトなプロトタイプに統合され、人工知能/機械学習(AI/ML)アルゴリズムを用いて複数ガスの識別とリアルタイム分析を行います。本研究は製品開発に加え、90本以上の学術論文、5件の特許、複数の国内外プロジェクト、ならびに国家科学技術賞の受賞につながり、強力な科学的・技術的・社会的影響力を示しました。
この研究開発プロジェクトの成果と社会実装は、大気汚染のリアルタイム監視と早期警報を通じて、大気環境と人間の健康に対する都市化や急速な工業化による悪影響(有害・有毒ガス排出量の増加)を軽減することを目指すSDGs目標11およびターゲット11.6に直接貢献します。

水熱法(上)およびCVD(化学気相成長)法(下)により成長させたMoS2ナノフラワーおよびナノフレークを基盤とする代表的な室温NO2センサーチップ。

ウェハー上に製造されたセンサーチップとプリント基板に実装後(左上)。無線監視用の代表的な複数ガス監視ステーションと携帯型ガス検知器(左下)。複数ガス監視ステーションのLoRa方式信号伝送・収集のテスト(右)
この度優秀賞を賜り、誠に光栄に存じます。日立財団、私の研究グループ、そして全ての協力者の方々に心より感謝申し上げます。今回の受賞により、スマートガス検知技術の推進と、より健康的で安全かつ持続可能なコミュニティのための影響力ある科学イノベーションの実現に向けた私たちの決意はさらに強固なものとなります。
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ターゲット9.5
量子技術とAIによるIC設計最適化:ベトナムなどの開発途上国における半導体研究開発の加速
Trang Hoang
ホーチミン市工科大学
Associate Professor, Electronics Engineering
ベトナム![]()
量子技術と人工知能(AI)を活用した集積回路(IC)設計の最適化:ベトナムをはじめとする開発途上国における半導体研究開発の加速化
開発途上国であるベトナムは、限られたインフラ、高価な設計ツール、熟練技術者の不足により半導体研究開発において大きな格差に直面しており、イノベーションとデジタルトランスフォーメーションが妨げられています。こうした技術格差によってグローバルバリューチェーンへの参加が制限され、ハイテク産業における経済機会が狭められています。
本研究では、半導体研究開発におけるコスト、複雑性、アクセス面の障壁に対処するため、アナログ集積回路(IC)設計向けのAIおよび量子技術を活用した新たな最適化プラットフォームを開発しました。メタヒューリスティックアルゴリズムを強化し、専門的なシミュレーションツールと統合することで、本ソリューションは設計時間の短縮、エネルギー効率の向上、スケーラブルなIC開発を実現しています。米国特許を取得し、学術機関でのパイロット導入に成功したこのプラットフォームにより、開発途上国の学生、スタートアップ企業、研究者は限られたリソースの中でも高度なアナログIC 設計に取り組めるようになり、ベトナムをはじめとする地域での包括的なイノベーションとデジタルトランスフォーメーションを推進します。
本プラットフォームは大学カリキュラムに組み込まれつつあり、特にベトナム有数の工科大学であるホーチミン市工科大学(HCMUT)で導入が進められています。また共同プロジェクトを通じて、IC設計スタートアップ企業や研究機関への技術移転が進展しています。指導者育成ワークショップ、セミナー、ウェビナーが開催され、能力構築を支援しています。また国内および地域のファブレス企業とのライセンス契約が進行中です。オープンアクセス・コンポーネントと産学連携ワークショップにより、普及が広く促進されています。本プラットフォームは既に大学院プログラムで試験運用され、博士課程・修士課程・学部の複数の学生を育成しています。こうした取り組みは、ベトナムにおける持続可能な半導体イノベーション・エコシステムの構築に貢献し、影響力の大きい研究開発分野での自立性を促進します。
本プラットフォームは、IC設計へのアクセスの平等化を推進し、エンジニアの能力強化を図り、イノベーションを加速させ、開発途上国における研究開発インフラを強化することで、SDG 目標9.5の達成を進展させます。また世界における技術格差を埋めると同時に、半導体分野における包摂的で持続可能な成長を促進します。

ラボでの研究開発の様子:設計・製造後のチップのテスト(2014年)

英国ヨーク大学における研究成果の発表(2024年)
大学教員として、科学は社会に奉仕するものでなければならないとの信念を持っています。私の使命は、特に開発途上国において、人々を力づける包摂的でアクセスしやすい技術を開発することです。教育と革新を通じて、地域社会のために持続可能な変化をもたらす次世代のエンジニアを育成することを目指しています。
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ターゲット2.3
全脂大豆から代替肉へ:単軸押出法による持続可能なタンパク質と地域連携
Floirendo Pantas Flores
フィリピン大学ロスバニョス校
Professor, Institute of Food Science and Technology
フィリピン![]()
単軸押出法による全脂大豆の代替肉への加工を通じた革新的なタンパク質持続可能性の実現:カガヤン・バレー地方における政府および農業協同組合との提携
フィリピンの大豆農家は大豆を高付加価値の代替肉に加工する場合でも、既存技術が高価であるため収益を上げることができません。国は大豆および粒状大豆(大豆ミート)の両方を輸入して、これら製品の健康上のメリットを得ています。このため農家や協同組合を支援して、先住民族、女性、学校に通っていない若者の雇用創出と持続可能な農業への貢献を実現できる経済的機会が存在します。われわれは、化学廃棄物を発生せずに代替肉を生成できる、費用対効果の高い単軸押出プロセスを開発しました。この全脂大豆プロセスにより、高タンパク質含有量と6カ月の保存期間を備えた栄養価の高い製品を製造できます。本技術は既に農業省カガヤン・バレー研究センターで採用されています。協同組合は製品をそのまま販売することも、また郷土料理として加工販売することもできます。私たちの協力的な取り組みは、SDGs目標3.2の達成に貢献し、小規模食品生産者の農業生産性を倍増させています。
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ターゲット12.2
農業廃棄物と水生植物を活用した有機肥料・バイオ炭の開発
Hoa Thi Thai Hoang
フエ大学
Professor, Department of Crop Science, Faculty of Agronomy
ベトナム![]()
持続可能な作物生産に向けた農業廃棄物および水生植物由来の有機肥料・バイオ炭製品の研究開発
ベトナムにおける化学肥料と農薬の過剰使用は、環境に望ましくない影響まで引き起こしています。解決策として、農業廃棄物や水生植物から様々な有機肥料・バイオ炭製品を生産する取り組みが成功し、フエ市での複数作物への効果検証も実施されています。本研究は、農家、地域社会、普及機関、研究者、民間企業に利益をもたらしています。改良技術の広範な導入により期待される全体的な影響としては、畜産・農業・ホテイアオイに起因する廃棄物による環境汚染の低減が挙げられ、具体的には化学肥料の使用量削減や地下水への養分流出の抑制、作物の収量・品質の向上、土壌肥沃度の改善と地域社会の健康増進などがあります。農業廃棄物や水生植物由来の有機肥料・バイオ炭の利用は、SDGs目標12(持続可能な生産消費形態を確保する)を直接支援し、特にターゲット12.2(天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用の達成)に貢献します。
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ターゲット2.4
有用微生物による水稲の生産性向上と持続可能な農業の推進
Kakada Oeum
カンボジア工科大学
Researcher, Research and Innovation Center
カンボジア![]()
稲作の生産性向上に向けた有益微生物(細菌および菌類)のバイオ肥料・バイオ農薬としての活用と持続可能な農業の推進
カンボジアの稲作農家は、土壌の質の低下、害虫や病害の頻発、肥料や農薬などの農業用化学薬品の過剰使用による健康リスクなど、多くの課題に直面しています。私の研究では、現地の田んぼから採取した有益な微生物(細菌や菌類など)を用いてバイオ肥料やバイオ農薬を作るという、シンプルで自然由来の解決策を提供しています。こうした小さな支援により、環境を損なうことなく、土壌の健康を改善し、植物を病害から守り、イネの収量を増加させることができます。現地の農家、非政府組織(NGO)、政府機関と連携し、実際の田んぼでこれらの天然物由来製品の試験と普及を進めています。こうした製品を安全かつ効果的に使用するために、農家には研修を実施しています。このプロジェクトは化学製品の使用削減、コスト低減、より健全で持続可能な農業の支援に役立っています。また、食料安全保障の向上、自然保護、農村コミュニティの生活向上を通じて、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓をゼロに」の達成に貢献します。
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ターゲット9.5
エネルギー、健康、環境モニタリングのための機能性ナノ材料ベースのセンサーの持続可能な製造
Ruri Agung Wahyuono
スラバヤ工科大学
Assistant Professor, Engineering Physics
インドネシア![]()
エネルギー・健康・環境モニタリングに向けた機能性ナノ材料ベースセンサーの持続可能な製造
インドネシアは医療アクセスの確保、食品の真正性認証、環境・エネルギーモニタリングにおいて常に課題に直面しているのに加え、高価な輸入センサー機器への依存がさらに状況を悪化させています。本研究開発イニシアチブでは、国内で調達したナノセルロース紙から製造した持続可能で多機能のIoT統合型バイオセンサーを開発し、低コストかつ環境に優しい生産を推進しています。開発されたプロトタイプには、神経疾患早期検出用「MediVeal」、慢性閉塞性肺疾患診断用「Co-Detector」、ハラール食品認証用「LardDetect」、有機・無機汚染物質検知用の五色分光器が含まれます。これらのシステムは携帯性に優れ現場対応可能で、熱帯及び農村環境向けに調整されています。
社会実装では、村の診療所や学校へのバイオセンサーの導入および小規模食品企業向けのハラール検査キットの提供に焦点を当て、現地での研修によって支援しています。本プロジェクトは主に、持続可能な製造と地域における技術創出を通じてSDG目標9(産業、技術革新、インフラ)を推進します。さらに、持続可能な開発に向けたアクセスしやすい技術、強靭なインフラ、コミュニティのエンパワーメントを実現することで、SDG目標3.d、3.9、6.3、6.a、7.b、8.2、8.3を支援します。
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ターゲット2.4
ラオス在来牛の生産性向上と環境負荷低減に向けた米焼酎粕飼料の活用
Sangkhom Khom Inthapanya
スファヌボン大学
Associate Professor, Dr., Animal Science
ラオス![]()
ラオスにおける在来種黄牛の生産性向上とメタン排出低減に向けた米蒸留酒製造所の副産物の活用
本研究は、米蒸留酒製造所の副産物を費用対効果の高い飼料として導入することで、在来種牛の生産性を向上させると同時にメタン排出量を削減して、ラオスの主要な社会課題に取り組むものです。この革新的な研究開発は、手頃な価格の飼料を通じて農村の生計を支え、食糧と飼料資源の競合を軽減することで食料安全保障を強化し、気候変動緩和に貢献しています。また、持続可能な廃棄物管理、革新技術への公平なアクセス、改良された飼料管理の文化的受容を促進します。実施内容としては、米蒸留酒製造所の副産物やキャッサバの葉を組み込んだ飼料ガイドラインに基づく農家研修プログラムや具体的な利点を提示する実証農場の展開が挙げられます。この研究イニシアチブは、生産性の向上、メタン排出量の削減、農村部の所得増加を通じて、社会にプラスの影響をもたらします。当ソリューションは、SDG 目標1(貧困をなくそう)、SDG 目標2(飢餓をゼロに)、SDG 目標12(責任ある消費と生産)、SDG 目標13(気候変動対策)を含む複数の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献します。
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ターゲット12.4
製鉄廃棄物由来グラフェン系ナノ材料による環境・産業応用の展開
Tan Thi Vu
ハノイ工科大学
Doctor, Group Inorganic Technology and Fertilizer, Department of Chemical Engineering
ベトナム![]()
産業廃棄物から合成した持続可能なグラフェン由来ナノ材料による循環型経済の促進、環境負荷の最小化、先進的な環境・産業応用の実現
社会問題:ベトナムの急速な工業化は資源に負担をかけ、廃棄物と汚染をもたらしています。
ソリューション(研究開発):製鋼工程で発生する廃棄物であるキッシュグラファイト(副産黒鉛)と電極スクラップを、超薄型で強靭な炭素材料の一種であるグラフェンへと転換します。環境に優しい拡張性のある手法を採用しており、これまでに17件の国際特許を取得し、査読付き論文を発表しています。このグラフェンは、水浄化、二酸化炭素(CO2)回収、エネルギー機器、防錆コーティングなどに活用されています。
社会実装:業界パートナーとの試験運用、ライセンス準備、パイロット生産ラインの計画を進めて実際の工場環境におけるコスト、安全基準、性能を確認します。
社会的影響/SDG:この取り組みはSDG目標12.4を支援します。有害廃棄物を有用な製品に変え、天然資源を節約し、有害化学物質を削減します。また、より長寿命な材料や膜を製造することにより、廃棄物の発生量を減らします。総合すると、ベトナムがよりクリーンで循環型の、イノベーション主導の産業へと移行するのを支援します。
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ターゲット3.b
公衆衛生の向上をめざした先進免疫ナノ医療およびワクチンプラットフォームの開発
Viet Quoc Le
トンデュックタン大学
Vice Dean, Head of Department, Department of Pharmaceutical Technology and Pharmacy Administration, Faculty of Pharmacy
ベトナム![]()
主要疾患を対象とした先進的な免疫ナノ医療とワクチンプラットフォームの開発による公衆衛生の向上
多くの開発途上国は、特に農村部において、手頃な価格の医薬品やワクチンへのアクセスが限られるなど、深刻な医療課題に今なお直面しています。がんをはじめとする慢性疾患に加え、デング熱や新型コロナウイルス(COVID-19)などの感染症が医療システムへの重い負担となっています。加えて、既存の医薬品の多くには依然として副作用や毒性の制約があります。
私のチームはこれらの課題に対処するため、薬剤やワクチンをより効果的に送達できる、安全で精密に調整された新種の材料を開発しました。これをナノプラットフォームと呼んでいます。例えば、光照射によるがん治療効果を高めるポリドーパミンナノ粒子、ワクチン反応を促進するペプチドベースのナノキャリア、治療成果を改善する先進的な生体材料インスパイア型薬物送達システムを開発しました。これらのシステムは実験室研究で非常に有望な結果を示し、トップクラスの学術誌で報告されています。
当研究は現時点では前臨床段階にあるものの、将来の実用化に向けた高い可能性を示しています。ベトナム及び東南アジア諸国連合(ASEAN)地域のバイオテクノロジー企業との連携を通じ、本研究の進展を図ってまいります。長期的には、ナノ医薬品分野における若手研究者を育成することで、手頃な価格で現地生産されたナノ医薬品への将来的なアクセス向上を通じた、国連持続可能な開発目標3(健康と福祉)への貢献を目指します。
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ターゲット3.4
多様な食品システムにおける食品の安全性、真正性、機能的品質を迅速に評価するためのグリーン分析手法
Widiastuti Setyaningsih
ガジャマダ大学
Associate Professor, Department of Food and Agricultural Product Technology
インドネシア![]()
多様な食品システムにおける食品の安全性、真正性、機能的品質の迅速評価のためのグリーンな分析
東南アジアの多くの研究所や食品メーカーは、依然として時間のかかる単一対象検査法に依存しているため、食品の安全性を確保し、地域の機能性成分の価値を引き出すことが難しくなっています。私の研究では、食品添加物、汚染物質、機能性化合物を迅速かつ同時に分析できる、環境に配慮した多対象分析法を開発してこの課題に取り組み、結果的に検査時間を数日から数分にまで短縮しました。
国内規制当局(インドネシア食品医薬品庁、税関、法執行機関)および中小企業を含む業界パートナーが、この手法をリアルタイム監視と製品開発のために採用しています。また、バナナの花に含まれる抗うつ成分や、多様な食用花に含まれる抗酸化物質など、天然の生物活性化合物のプロファイリングも可能にしています。
オープンアクセス型ウェブプラットフォームであるため、ココアと大型藻類の認証への国際的なアクセスが広がっています。本研究は、規制当局、企業、コミュニティによる安全で機能的な食料システムの推進を実現する拡張可能なツールを通じて予防医療と食品イノベーションを支援することで、SDG目標 3.4に貢献します。